1.曹洞宗のお葬式とは
仏教の教えは約2500年ものあいだ、師から弟子へと受け継がれてきました。
曹洞宗は、鎌倉時代に道元禅師が中国より禅の教えを日本へ伝えた宗派です。
曹洞宗のお葬式は、ただ「お別れ」をするだけの儀式ではありません。
故人が迷いや苦しみから解き放たれ、お釈迦さまの教えに帰依し、仏さまの世界へ旅立つための大切な法要です。
葬儀を通して、故人は仏弟子として新たな一歩を踏み出されます。
残された私たちも、供養を通じてその旅立ちを支え、今を生きる自らの姿を見つめ直す機縁といたします。
2.葬儀の流れ(全体のながれ)
故人は葬儀によってお釈迦様の弟子となり、煩悩から解き放たれた仏さまの世界へと旅立たれます。
仏の弟子となって頂き、旅立たせることが曹洞宗の葬儀です。
剃髪(ていはつ)
懺悔(さんげ)
洒水(しゃすい)
授戒(じゅかい)
音楽供養(大宝楼閣善住根本陀羅尼)
引導(いんどう)
回向(えこう)
このような流れのなかで、葬儀が進められていきます。
それぞれの儀式には深い意味が込められています。以下にご紹介いたします。
3.剃髪から授戒まで
剃髪(ていはつ)
剃刀をかざし、現世の煩悩や執着を断ち切ります。
髪を剃ることで、故人が仏弟子として生まれ変わる決意を象徴します。
剃髪の偈
流転三界中<あらゆる世界を彷徨い続ける私達にとり>
恩愛不能断<家族との恩愛を断つ出家は忍び難い>
棄恩入無為<されど恩愛を断ち仏弟子となることこそ>
真実報恩者<真に父母家族の恩に報いる者となる>
剃除鬚髪<髪の毛とひげを剃り落とすとき>
当願衆生<故人のために皆でひたすら願う>
永離煩悩<煩悩の苦しみから永遠に離れ>
究竟寂滅<いつまでも安らかであることを>
懺悔(さんげ)
現世での行いを省み、仏弟子として清らかな未来を誓います。
「懺悔文(さんげもん)」を唱え、心の垢を洗い清めます。
懺悔文
我昔所造諸悪業<自らの行いで生じた諸々の罪悪は>
皆由無始貪瞋痴<心に潜む欲と怒りと愚かさが原因>
従身口意之所生<行い、言葉、意識により生じたもの>
一切我今皆懺悔<我今、その一切を仏前に懺悔する>
洒水(しゃすい)
導師より智慧の水が洒がれ、仏法への目覚めを促します。
水は場を清め、煩悩を滅し、真の目覚めへと導くものとされています。
導師は自らが受け継いだ祖師伝来の教えを水に溶かし、場を浄め、煩悩を滅除し、故人を真の仏法に目覚めさせます。
授戒(じゅかい)
仏弟子としての十六条の戒め(約束事)を授かります。
三帰戒(さんきかい)
三聚浄戒(さんじゅじょうかい)
十重禁戒(じゅうじゅうきんかい)
これらは 「してはならない」ではなく、「しない」 という心からの誓いです。
善い行いを積み、仏弟子としての道を歩みます。
授戒を通して授かる証は二つあります。
@ 戒名(かいみょう)
仏弟子としてのお名前です。仏法の教えが込められています。
A 血脈(けちみゃく)
お釈迦さまから連なる祖師方の名前が記された系図。
朱の線で一つに結ばれ、戒名とともに故人に授けられます。
4.音楽供養(大宝楼閣善住根本陀羅尼)
曹洞宗では古くから、葬儀での「音楽供養」が大切にされてきました。
「大宝楼閣善住根本陀羅尼」の前後に鳴らされる法具の音色は、諸仏諸菩薩をお招きし、故人を仏さまの世界へと導きます。
ゆったりとした調べから始まり、次第に間隔が短くなり、厳かな響きが場を満たします。
5.引導
導師は鍬を手に、円を描く「引導作法」を行います。
円は悟りの象徴であり、生と死が一体であることを表します。
続いて読まれる「法語」では、故人の生前の功績を讃え、仏さまや祖師方の教えをお伝えします。
6.功徳を廻らし故人に手向ける(回向)
葬儀では僧侶が読経を行い、参列者は焼香を捧げます。
こうした一つひとつの行為には功徳(善い行いによって生まれる善き縁)が宿ります。
その功徳を廻らし、故人の旅立ちに手向けます。
功徳とは、読経・写経・巡礼だけでなく、日々の善い行いや施しにも宿ります。
誰かのために行った善き行いは、巡り巡って故人にも届くとされています。
「故人に恥じぬ生き方をしよう」と願うことも、また供養の一つとなります。
7.検校庵のお葬式の特徴
検校庵の葬儀では、参列された方々とともに初七日で次の供養を行っております
追弔御和讃
舎利礼文
普回向
初七日の供養では、皆さまに大きな声での読経をお願いしております。
共に心を込めて、故人の旅立ちをお支えいただければ幸いです。
8.おわりに
葬儀は故人のためであると同時に、残された私たちにとっても大切な「今を生きる」学びの場です。
自らの命を大切にし、日々善い行いを積むことが、巡り廻って故人への供養にもなります。
ともに心を整え、尊いひとときを紡いでまいりましょう。